杖道、杖術とは「杖」と呼ぶ木製の棒を用いた武術の一種です。現代武道の一つとしても一般に普及している杖道は、夢想権之助勝吉(宮本武蔵と同時代の人) を流祖とする「神道夢想流杖術」の流れを汲むもので、両手を広げた両掌中の程よい長さの杖(長さ四尺二寸一分(約128cm)、径八分(約24mm) の樫の棒が一般的)を用いて左右均等に千変万化の技を繰り出すものです。
また、杖道は形武道です。形武道は一般に攻撃と防御を合理的に組み合わせた形を反復して稽古する武道のことであり、合気道、居合道もこの形武道の典型といえるでしょう。
神屋 善四郎 師範
(カミヤ ゼンシロウ )

神道夢想流杖術七段
免許皆伝
川名 克実 師範
(カワナ カツミ)

神道夢想流杖術七段
免許皆伝

大正、昭和初期の剣聖中山博道は神道夢想流杖術を次のように絶賛しています。
「私は、青年時代に神道夢想流杖術の師範内田良五郎先生より杖術を教わって、初めて剣の裏が分かった。それに、杖独特の手の内、足捌き、体のこなし方等を憶え、剣道の稽古中にも杖の技を生かし、それがため私は大いに得るところがあった。」「全国にそれぞれ武術諸流の形があるが、神道夢想流杖術のごとく洗練された良い形はない。武術の中でも国宝的なものだ。」また、講道館柔道の創始者嘉納治五郎も神道夢想流杖術を高く評価し、間合いを学ぶには最良の武術として推奨し、故清水隆次師範を招き講道館の高段者に神道夢想流を学ばせました。

神道夢想流杖術は、江戸時代初期の剣豪・夢想権之助勝吉を流祖とする杖術です。諸国の剣客と多くの仕合をしてきた夢想権之助は、かの宮本武蔵と立ち合うも敗れたとあります。しかし、その後は杖術の研究を重ね、再び武蔵と立ち合い、ついにはこれを破り、その後に流派を開いたと伝えられています。以後は、福岡・黒田藩に杖術を持って仕え、門外不出の捕手術とされ明治に至ります。明治維新後は全国普及への端が開かれ、昭和に入り杖術の流派では唯一「全日本剣道連盟」に所属します。そのため、警察庁での警杖術に正式採用され、現在に至ります。